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第8話 空咲晴翔の苦悩

Author: 霞花怜
last update Huling Na-update: 2025-05-28 06:00:27

 理玖の研究室を飛び出した晴翔は、近くにあった資料倉庫に逃げ込んだ。

 鍵をかけて部屋の奥に向かう。

「はっ、はぁ……、はぁ」

 頭がくらくらして足元もおぼつかない。

 ピアスを耳に押し付けながら、飛びそうな意識を、なんとか保った。

 一番奥の窓際の壁に、へたり込んで背中を預けた。

 さっきの理玖を思い出すだけで、股間が反応してしまう。

「勃ちすぎて、痛ぇ……」

 それでなくても既にフェロモンでぎちぎちに勃起している。

 更に反応しないように抑え込んだ。

「可愛い、ヤバい、あんなの狡い。普段は塩対応なのに甘えると可愛いとか。声も仕草も顔も全部可愛いから!」

 突然、下の名前で呼んだかと思ったら、自分から晴翔に身を寄せて、顔を擦り付けて、体をくっ付けて。まるで甘えるような仕草を甘えた顔でされたら、耐えられない。

(スリスリってしてピタってくっつく仕草、めっちゃ可愛かった。リスみたいだった。俺を見上げた顔だって)

 蕩けた顔がキスを催促しているようで、吸い付いてしまいそうだった。

 頭を何度も振って、大きく息を吸い込む。何とか呼吸を整えた。

 自分の胸に手を当てる。

(手も体も、熱い。心臓、まだ早い。意識、保てて、良かった)

 抱きしめた腕の中で晴翔を見上げた理玖の顔が頭から離れない。

 何より、花の蜜のように甘く薫るフェロモンが、普段の比ではなかった。

(やっぱり理玖さんはonlyなんだ。触れるようになった途端にビックリするくらいフェロモンが増えた)

 この一年、理玖に直に触れるのは、極力避けてきた。そのせいか、理玖からフェロモンを感じなかった。恐らく、阻害薬の効果の範疇で対応できていたんだろう。理玖自身も抑制剤を飲んでいたはずだから余計だ。

(一年前の、初めて会った日に御姫様抱っこした時は、フェロモンなんか感じなかった。あんなにがっつり抱きあげたのに)

 だから、理玖がonlyであると確信が持てなかった。薬の効果で感じないだけなのか、そもそもフェロモンを放出していないのかが、判断できなかった。

 しかし二回目の今は、これだけ体が反応している。理玖がonlyなのは確定だ。

(しかもフェロモン量が多くて特殊な、例の希少種の可能性が高い。噂は本当だったんだ。あんなの、薬じゃどうにもできない)

 耳のピアスに触れる。

 即効性の抑制剤を仕込んだピアスはボタン式の皮下注射で
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